<孫オーナーとの固い信頼> 巨人の渡辺球団会長(87)が2日、再び怪気炎を上げた。 1日に次期コミッショナー候補にソフトバンクの王会長(73)を推すと、この日も「各球団のオーナーの中に、誰か他に(候補者を)連れてこられる人がいるか? オレは他に誰も推さない」と豪語。王会長が「光栄だが、体力的に無理」と拒否したことについても、「何とか回復して受けてもらうしかない」と強硬姿勢を見せた。 しかし、王会長とソフトバンクの孫正義オーナーの関係を考えれば、コミッショナー就任は百パーセント、あり得ない。 「孫オーナーは王会長が理事長を務める世界少年野球推進財団のスポンサーとして、財政面でバックアップしている。その額は3億円とも5億円ともいわれている。球団内で反王会長派が実権を握りかけた時も、チームのためにならないと会長本人がオーナーに直談判。反対派を一斉に飛ばした。それほど孫オーナーは王会長を信頼、心酔している。そんなオーナーに、王会長も恩義を感じている」(球界関係者) 実は王会長はダイエー監督時代の04年に、コミッショナー就任を蹴った経緯もある。 「その年で退任する川島コミッショナー(故人)の後釜として打診を受けた。コミッショナーの年俸は2400万円と交際費、公用車1台。当時、ダイエーからは監督交際費を含めて2億円以上もらっていた。金銭面だけでなく、『自分は水戸黄門にはなれない』と常々話していた。要するに裁定役には向いていないという気持ちもあったようです。現在もソフトバンクの要職に就き、億単位の報酬がありますからね」(同) さらに言えば、王会長は渡辺会長と巨人に関しては、こんな話があると巨人の球団関係者がこう話す。 「88年に王さんが巨人監督を退任した時です。退団会見で当時の正力亨オーナー(故人)は『契約満了につき……』と説明した。球団の大功労者に対してあまりにビジネスライクすぎるのでは、と感じた関係者は少なくなかった。その原稿を書いたのは、当時読売新聞副社長だった渡辺会長だったのです」 王監督(当時)がどんな気持ちで聞いていたかは想像に難くない。退団をめぐる一連の動きが、巨人に戻らない決意をさせたともいえる。 渡辺会長が唐突に「王コミッショナー」をぶち上げたのは、加藤コミッショナーへの批判の矛先をそらすためだろう。 ボールすり替え事件で「彼に責任はない」と擁護したものの、逆に巨人とコミッショナーの関係を疑われる事態さえ招いている。選手会の反発も強くなるばかりだ。ソフトバンクの関係者からも「勝手に名前を出された」と怒りを買っている。 名前を出すことで渡辺会長は鎮火を狙ったのかもしれないが、王会長こそはいい迷惑だろう。
日刊ゲンダイ